2009年3月

書 名 図書館―愛書家の楽園―
著者名 アルベルト・マングェル
出版社名 白水社:新装版(2018年)

 

2年間、学術情報センター長として、図書館について考える機会が絶えずありました。「大学図書館は誰のための、何のための施設か」という問い方をすれば、答えは自明で、誰もが同じように答えるでしょう。私も職責上、「大学図書館には三つの大切な機能がある。教育研究支援機能、資料保存機能、文化発信機能であり、これをバランスよくいかに充実させるかが課題だ」と公の席で何度も発言してきました。もちろん、このことに少しも嘘はなかったし、そのために微力ながら尽力してきたつもりです。しかし、心の片隅ではこのような図書館の捉え方にかすかな違和感を覚える部分があったのも事実です。

昨年秋に発刊された「図書館―愛書家の楽園―」という本と出会って、私は自分の違和感が何であったかに気付きました。「愛書家の楽園」、そうです。これこそ図書館の原点を言い当てている定義ではないでしょうか。この本を紐解くと、歴史的にも、図書館は機能的な問い(何の役に立つのか)だけによって、その存在の正統性が承認されてきたわけではないことがわかります。役に立つか立たないかと問う以前に、図書館は少なからぬ人々にとって広大な知識の世界に開かれたワクワクする空間でした。紀元前三世紀にエジプトの地に建てられたアレキサンドリア図書館は世界最初の大図書館として有名ですが、その創設の動機は機能性という観点からかけ離れたところにあったといいます。アレキサンドリア図書館以前にも古代世界には、法的な書類や文書記録を集めた公的な書庫が各地に存在していました。しかし、特定の目的のために文書を保管する必要性よりも、世界の多様性についてすべてを知りたいという欲求=好奇心が勝ったからこそ、「書庫」から「図書館」へという飛躍が生まれたのでした。

起源がそのような点にあることを考えると、図書館は何より知的好奇心が自由に羽ばたく楽園でなければなりません。本書は、そうした楽園の創造のために(ときに異常な)情熱を傾けた愛書家たちの物語で埋まっています。アレキサンドリア図書館に地上のありとあらゆる書物を集めようとしたプトレマイオス王、大英図書館誕生のために一生を捧げたパニッツィ、2003年のクリスマスに崩れた本の山の下敷きになって3日目にやっと消防士に救出されたニューヨーカー、どの愛書家の逸話も、本好きには何か自分に思い当たるところがあって、興味がつきません。インターネット時代の図書館のあり方を含めて、21世紀の「楽園としての図書館」について考えてみたいすべての愛書家に、この本を薦めます。

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Yoshinobu Kato

最近、「らじるらじる」というNHKラジオ番組を聴いています。お気に入りは「大竹しのぶのスピーカーズ・コーナー」と「高橋源一郎の飛ぶ教室」です。

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