2007年9月
| 書 名 | 子どもは判ってくれない |
| 著者名 | 内田樹 |
| 出版社名 | 文春文庫(単行本は2003年、洋泉社刊) |
子どもの頃、大人とは何か遠くの、手の届かない世界に生きている存在のように感じていました。自分が大人になったら、まったく違った世界が開けるようにも感じていました。ところがその後、職業を持ち結婚もして、長い年月が経ったというのに、子どものときから決定的な断絶があったようにどうしても思えません。そうすると、この歳になって「大人って何だろう?」と改めて考えてしまいます。本書は「まだ大人ではない」と自覚する50代の著者が、この問いに拘って、「大人の思考と行動」とはどういうものかを若い人たちに語ろうとした書物です。もちろん、著者は「子どもっぽさ」の一部をなす無力や無知や依存の対極に、何か理想的な「大人の思考と行動」があると考えているわけではありません。「すべての家庭はどこかで欠陥があり、すべての親は何かに依存しており、そこで育つ子どもたちは、多かれ少なかれ、そのせいで精神に歪みをきたしている」ことを前提に、そうして育った私たちが自分の「精神の歪み具合」を多少なりとも自覚して「社会的な許容範囲内」に留めながら、別のどこかに「本当の自分」を求め続けず、いまここの自分と回りの他者を大切にして生きること、それこそが著者の考える《大人の生き方》なのです。
なお、本の表題『子どもは判ってくれない』は、フランソワ・トリュフォーの映画『大人は判ってくれない』のもじりであることは、マニアならすぐわかるでしょう。内田樹には、『疲れすぎて眠れぬ夜のために』(角川書店)などの類書の他に、読みごたえのある『ためらいの倫理学』(角川文庫)、『レヴィナスと愛の現象学』(せりか書房)があります。
