2007年10月
| 映画名 | 大人は判ってくれない(DVD) |
| 著者名 | フランソワ・トリュフォー監督 |
前回は内田樹の『子どもは判ってくれない』を取り上げたので、今回はその題名の元になった映画『大人は判ってくれない』を取り上げます。フランソワ・トリュフォーは27歳のとき、長編第一作としてこの映画を作り、1959年のカンヌ映画祭で最優秀監督賞を受賞し、一躍ヌーヴェル・ヴァーグと称される新しい映画潮流の旗手となりました。トリュフォーはその後、ちょっぴりユーモラスで、それでいて美しくも哀しい恋愛映画を多数作りましたが、彼が生涯こだわりをもって描こうとした本当のテーマは「子どもの不幸」ではなかったかと、私は思っています。親に愛されず、家出を繰り返し、朝には牛乳を盗んで飲み、夜には好きな映画のスチール写真を盗んで逃げる少年だったトリュフォーは、ついには父親によって警察に突き出され少年鑑別所に送られます。『大人は判ってくれない』は、自らのそうした子ども時代の「不幸」をセンチメンタルな回想や憤り、告発の視点から描くのではなく、まさに子ども自身がそのときそのように生きていた瞬間を映像として提示することに成功した、稀な映画です。
映画狂少年トリュフォーは、その後、映画を通して他者への信頼や世界の温もりに目覚め、自らがその創造に携わる道を歩むことになります。山田宏一『トリュフォー:ある映画的人生』(平凡社)を読めば、傷つきやすくやわらかな感性の人であったトリュフォー自身とその映画が、きっと好きになることでしょう。
